■はるか昔新世界エルバフ。
【63年前──エルバフ】
ナレーション:
巨人族発祥の地エルバフ──
中心街より少し離れた港町『スパルティ』
数人の巨人族が村の中心で酒を飲みながら会話をしている。
「お頭達が帰ってこなくなってからもう随分になるなぁ」
「偉大なる航路(グランドライン)のある島で決闘を始めたって聞くが──あの2人の決闘じゃ島がもたねェぞ!! グフフフ」
「…しかしお頭たちが決闘か……ならばエルバフに帰るのは一人…」
「寂しくなるな…!!」
ドンっと人間大のジョッキを机に置く兜の巨人。
「”エルバフの戦士”ともあろう者が甘ったれたこと言ってんじゃねェ!!」
「『決闘』は戦士の宿命!! 例え肉親だろうが一度始まりゃどちらかが死ぬまで続くんだ!!」
鎧の巨人「そうだが…」
兜の巨人「貴様のような軟弱者がいるとは”巨兵海賊団”の名折れ!!」
「立て! 鍛え直してやる!!」
少女「………」
そんな彼らの姿を、少し離れた建物の窓から眺めている少女。
~若き日のシャーロット・リンリン(後の四皇ビッグマム)~
リンリン
「くだらない話」
「どうして巨人族の男はああも名声こだわるのか理解できない…ねぇマザー」
煙草をふかしながら椅子に腰かけている小柄な女性。
~シスター マザー・カルメル~
フゥーっと煙を吐きながら、カルメルがニコッと笑う。
「エルバフの男達は全員が戦士として幼い頃から育てられているからね…」
「特に巨兵海賊団はとびきりの荒くれ者の集まりさ」
シャーロット
「ふぅん…それよりマザー、また出かけるの!? 遅くなる?」
マザー
「すぐに帰ってくるよ」
「いい子にしておいで」
シャーロット
「…だけどこの村のやつら嫌い…」
「誰もおれの言うことを聞いてくれないの」
吸殻で山盛りの灰皿に煙草を揉み消すマザー。
マザー
「じきに慣れるさ」
「みんなもいずれ分かってくれる」
「あんたにとってはエルバフで過ごすことが安全だからね」
【回想】
とある新世界の国、争いの絶えないこの地で街から少し離れた場所にたたずむ教会。
そこには家族を失い行き場所を失った孤児が数人。
そのなかで一際大柄の少女が一人離れた場所でお腹を空かして座っている。
一切れのパンを差し出すシスター・カルメル。
「お食べ」
「その大きな体じゃあ足りないだろうけど」
パンに齧り付く少女。
だが食べた途端、再びお腹がなりはじめる。
シスター
「あんた、どうしてこんな離れた場所にいるんだい?」
「他の子供達といれば少しは気が紛れるだろうに」
少女
「いいの」
「だって体が大きいし、みんなとは違うもの…」
少し考えているシスター。
「…この国もいよいよ危なくなってきたね」
少女
「?」
シスター
「教会とはいえ、いつ危険が及ぶかわからない」
「あんた、もしよかったら私と一緒に来るかい?」
「あんたが大きくても平気な国を知ってるんだ」
【回想終わり】
マザー
「じゃあ出かけてくるよ」
マザー・カルメルを送り出しつまらない様子のリンリン。
寂しさをまぎらわそうと村を歩く。
「おい、アイツだ!」
「ああ、どっかの国から逃げてきたヤツだろ?」
リンリンが歩く先々で後ろ指をさされている。
(これが幸せ…?)
一方、港へ一人やって来たマザー・カルメル
定期船が到着するのを待っていると背後から一人の巨人が近づいてくる。
若き日のハグワール・D・サウロ。
サウロ
「久しぶりだで」
■サウロとマザー・カルメルの意外なつながりとは…!?